KiteRa Pro
2022/03/13
労働基準法
監督署が行う書類送検とは②

前回は、労働基準監督署が行う司法捜査の発端について解説をしました。
今回は、労働基準監督署が行う捜査手法について、お話しします。
捜査等
刑法上、労働基準法に違反として立件するためには、構成要件、故意、責任をそれぞれ立証する必要があります。このうち、構成要件及び故意について解説します。
①構成要件
構成要件とは、被疑条文を分解して、それぞれの要件が成立するかを、捜査をするものです。例えば、労働基準法第32条第1項では、「使用者は、労働者に、休憩時間を除き一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。」と規定されており、この条文を、下図のように分解をします。
使用者は、労働者に、休憩時間を除き 一週間について四十時間を超えて、労働させてはならない。
上記分解したそれぞれの要件について、立証をする過程が必要です。
②故意
刑法犯では、「故意」がないと原則として処罰されません。また、労働基準法には「過失犯」の概念がないため、刑法犯として立件するためには、故意を必ず立証しなければなりません。故意とは犯罪を犯す意思であり、結果の認識・認容等を指します。
③立証過程
上記の構成要件、故意を立証するために、労働基準監督官は証拠を収集します。証拠として、例えば、タイムカード、賃金台帳等の帳簿のほか、被疑者や参考人からの供述をもとにした供述調書等があげられます(刑事訴訟法第198条、同法第223条)。
これらの証拠収集は、原則として、被疑者・参考人の任意の協力にもとづいて行われます(任意捜査の原則)。ただし、相手方が任意捜査に応じない場合、証拠の滅失等の可能性がある場合には、裁判所の令状により、強制捜査を行うことがあります(刑事訴訟法第197条第1項等)。
④送検
③の立証過程を経て、所轄の検察庁へ一件書類を送致(書類送検)します。預け入れられた一件書類をもとに、検事が略式起訴又は正式裁判等によって処罰を決定するか、略式起訴の場合には、犯罪の成立の有無・量刑等を決定します。
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