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新型コロナウイルス感染症に関する就業制限

KiteLab 編集部
2022.01.25

新型コロナウイルスの感染拡大がやっと収まりつつありますが、新たな新型コロナウイルス株の出現等により、感染が一時的に拡大することも考えられます。あらためて社内制度を見直し、ウィズコロナに向けて準備してはいかがでしょうか。本記事では新型コロナウイルス感染症に関する就業制限について、整理します。

労働安全衛生法に基づく就業禁止

労働安全衛生法第68条及び労働安全衛生規則第61条では、「病者の就業禁止」が定められており、事業者は、伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものにかかった労働者については、産業医その他専門の医師の意見を聞き、就業を禁止しなければならないこととされております。

伝染性の疾病その他の疾病で、厚生労働省令で定めるものとは

  1. 病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病にかかった者
  2. 心臓、腎臓、肺等の疾病で労働のため病勢が著しく憎悪するおそれのあるものにかかった者
  3. 前各号に準ずる疾病で厚生労働大臣が定めるものにかかった者

 上記疾病等のうち、1「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」については、感染症予防法に下記疾病が定められています。

  • 一類感染症 エボラ出血熱/ペスト など
  • 二類感染症 結核/ジフテリア/鳥インフルエンザ など
  • 三類感染症 コレラ/細菌性赤痢 など
  • 新型インフルエンザ等感染症

※新型インフルエンザとは、季節性インフルエンザと抗原性が大きく異なるインフルエンザであって、一般に国民が免疫を獲得していないことから、全国的かつ急速なまん延により国民の生命および健康に重大な影響を与えるおそれがあると認められるものをいいます。

就業禁止と休業手当

労働基準法第26条では、使用者の責に帰すべき事由による休業の場合には、使用者は、休業期間中の休業手当(平均賃金の100分の60以上)を支払わなければならないとされています。そのため、病気等を理由に会社が従業員に休業を命ずる場合は、原則として休業手当の支払いが必要となります。

ただし、上記、労働安全衛生法に基づく就業禁止に当たる場合については、「使用者の責に帰すべき事由による休業」にはあたらない為、休業手当の支払いは不要です。

新型コロナウイルス感染症の位置づけ

令和2年2月1日施行の政令にて新型コロナウイルス感染症は、感染症法上の「指定感染症」に指定されました。これにより、新型コロナウイルスは労働安全衛生法上の就業禁止の対象となる「病毒伝ぱのおそれのある伝染性の疾病」には当たらず、「指定感染症」として感染症法に基づく都道府県知事からの就業制限が課されることとなっています。

※指定感染症: 既に知られている感染性の疾病であって、感染法上の規程の全部又は一部を準用しなければ、当該疾病のまん延により国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがあるものとして政令で定めるもの

※令和3年1月7日施行の政令にて指定感染症としての指定の期間は1年間延長されており、現在、令和4年1月31日までとなっています。今後、位置づけが変わることもありますので、ご留意ください。

新型コロナウイルスに感染した従業員に対する賃金や休業手当の支払いについて

業務外の事由により新型コロナウイルスに感染し、都道府県知事が行う就業制限により従業員が休業する場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に該当しないと考えられますので、休業手当を支払う必要はありません。休業中については、要件を満たせば、健康保険から傷病手当金が支給されます。

これに対し、業務遂行中に業務に起因して新型コロナウイルスに感染した場合は、業務上の災害として、休業補償を行う必要が出てきます。

新型コロナウイルスに感染した疑いのある従業員に対する賃金や休業手当の支払いについて

ご家族の感染等により濃厚接触者となった、発熱等の症状があり感染が疑われる等の場合、従業員が自主的に年次有給休暇等を使用してお休みする場合は、休業手当の支払いの対象とはなりません。

但し、感染予防のために会社の自主的な判断で休業を命ずる場合は、「使用者の責に帰すべき事由による休業」に当てはまり、休業手当を支払う必要があります。

まとめ

今回は新型コロナウイルス感染症に関する就業制限について、法律上の取扱いを整理しました。ウィズコロナに向け、どういった場合に休業させるのか、その場合の休業手当の支払いはどうするのか、濃厚接触者等で体調に問題のない従業員についてはテレワークを活用するのか等、社内ルール検討のお役に立てればと思います。

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