TOP労務コラム労働基準監督署における定期監督と社労士が行うべきこと

労働基準監督署における定期監督と社労士が行うべきこと

KiteLab 編集部
2022.02.07

厚生労働省の下部組織である労働基準監督署(以下「監督署」という。)には労働基準監督官(以下「監督官」という。)が配属されています。監督官は、事業場に臨検し、帳簿等の提出を求め、又は使用者若しくは労働者に対して尋問を行う権限を有しています。顧問先の事業場において、監督官が突然調査に訪れることもあり得ます。監督署はどのようにして調査をする事業場を選定し、どのような項目について調査をするのでしょうか。今回は監督署が実施する臨検について3部構成でお話します。

臨検の種類

監督署が行う臨検の種類は大きく分けて次の4つです。

  1. 定期監督
  2. 申告監督
  3. 災害時監督
  4. 再監督

 

定期監督
「地方労働行政運営方針」に沿って行われる調査

申告監督
労基法第104条に基づき労働者より申告がされた場合等に行われる調査。定期監督と違い個人的な権利救済が優先される

災害時監督
労働者が業務中に負傷等をし、その負傷の原因が労働安全衛生法違反に起因する疑いがある場合に行われる調査

再監督
是正状況が芳しくない場合等に改めて行われる調査

上記の1~4のうち、今回は「定期監督」についてお話をします。

定期監督

定期監督とは「地方労働行政運営方針」に沿って行われる調査です。地方労働行政運営方針は社会情勢等を勘案し、労働行政が果たすべき役割とその実行に向けた取組について策定された通達です。この通達により、臨検調査対象となる事業場を年度ごとに計画・策定し、その計画・策定に基づいて臨検調査が行われます。

令和3年度地方労働行政運営方針では、①自動車運送業、建設業、情報サービス業における勤務環境の改善、②長時間労働の抑制に向けた監督指導等、③特定の労働分野における労働条件確保対策の推進等が盛り込まれています。

②については、各種情報から時間外・休日労働時間数が1か月当たり80時間を超えていると疑われる事業場及び長時間にわたる過重な労働による過労死等に係る労災請求が行われた事業場に対する監督指導を引き続き実施することとされています。そのため、80時間を超える延長時間を締結した36協定を届出た場合や、その他各種情報から長時間労働が疑われる事業場に対しては調査が重点的に行われます。

③の特定の労働分野とは、技能実習生を雇用している事業場、介護事業、トラック・バス事業等が該当します。これらに該当する事業場も臨検対象となる可能性が高いです。

定期監督の実施は事前に通告はされるか

臨検を含む定期監督の実施は、原則的に事前の予告なしに行われます。これはILO条約を批准しているためといわれています。ただし、調査の内容や事業場の形態等から、予め日時を指定して監督署に来署(出頭)を求められる場合もあります。
前者の場合、実務的には、監督官が予告なしに臨検に訪れるものの、日程を調整した後に改めて調査を行うことが一般的です。後者の場合、指定された日時に出頭ができない場合は、日時の調整等が可能です。

社労士は臨検に立ち会えるか

臨検を含む定期監督に社労士が同席することは可能です。ただし、社労士は法律行為を行うことができないため、社労士のみで臨検に応じることはできません。是正勧告書等も原則として社内の一定の職責のあるものに受領をさせるため、社労士が代わって是正勧告書等を受け取ることもできません。

社労士が行うべきこと

顧問先の事業場が監督署の臨検対象となった場合に、社労士としてどのような対応をとればよいでしょうか。定期監督では、①労基法第32条関係、②労基法第37条関係、③安全衛生法第66条関係を重点的に調査します。
臨検の実施にあたり、監督官から調査のために必要な書類一覧を示されることが多いため、それらの書類を事前にチェックすることで、調査をスムーズに終えることができます。また、「災害時監督」「申告監督」の記事についても、ぜひご覧ください。

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