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2021/08/25
働き方改革

改正後の職業安定法の特徴は?雇用保険法の概要と違反例/対処法を解説

職業安定法とは?

会社が従業員を採用する際、労働条件を明示しなければなりません。明示事項は業務内容、契約期間、就業場所、就業時間・休憩時間・休日、賃金、加入保険(雇用保険や健康保険等)などです。これを規定している法律が職業安定法です。

職業安定法は、各人にその能力に応じて妥当な条件の下に適職に就く機会を与え、職業の安定を図ることが目的で、ハローワークや民間の職業紹介事業者が求職者に対して職業紹介をする上でのルールや、民間の事業者が職業紹介事業に参入するときの規制などを定めています。

平成 29 年3月 31 日に職業安定法の一部の改正を含む「雇用保険法等の一部を改正する法律」が成立し、同日、公布されました。職業安定法の改正については、平成 29 年4月1日、平成 30 年1月1日、公布の日から起算して3年を超えない範囲内において政令で定める日の三段階で施行されます。

引用:厚生労働省WEBサイト(平成29年職業安定法の改正について)

関連する雇用保険法とは?

一方従業員が退職する際には、会社は離職票を作成したり、失業の手当が給付できるようにサポートしなければなりません。また従業員が就業中であっても育児や介護で休業する場合に休業の給付金を支給することがあります。これらは雇用保険法に基づいて行われています。

雇用保険法は、労働者の生活及び雇用の安定を図ることを目的としていて、労働者が失業した場合、雇用の継続が困難になった場合、労働者が自ら職業に関する教育訓練を受けた場合に必要な給付を行います。また昨年からのコロナ禍で申請が急増した雇用調整助成金、そして事業規模の縮小に伴い離職を余儀なくされる労働者等に対しその再就職を促進する労働移動支援助成金。この2つの助成金も雇用保険料の財源から行われています。

雇用保険法を具体的に解説

労働者は会社に雇用されると、雇用保険だけではなく労災保険、正社員であれば健康保険と厚生年金保険に加入することになります。会社に入って社会保険に加入したということです。労災保険を除いて、給料日にはそれらの保険料が控除されます。

そして「もしもの場合」その保険からお金がでます。これは民間の生命保険と同じで、医療保険なら健康保険(業務外傷病)と労災保険(業務上傷病)、終身保険などの死亡保険なら厚生年金保険(業務外死亡)と労災保険(業務上死亡)に対応しています。

しかし雇用保険だけは民間の生命保険でも損害保険でも対応するものがありません。その給付事由は主に「失業」だからです。なぜ民間で失業に対応するものがないかというと、それは「保険」の対象になじまないからです。保険は「故意」に保険事故を起こした場合は給付されないのが原則だからです。失業は解雇される場合もありますが、自分から自己都合で辞めることもあります。それは故意に保険事故を起こしているということになります。民間の保険では、このような事故に対する補償、保障はあり得ないのです。

雇用保険といえば思い浮かぶのはいわゆる失業手当です。正確には雇用保険の基本手当です。従業員にとってはこの基本手当の他に先に述べたような様々な給付を受けることができます。必ずしも退職して失業手当をもらうだけが雇用保険ではありません。在職中から給付金もらえる場合がありますので、仕事のための勉強をしたり、介護のため、育児のため休みをとることがあれば雇用保険のことを思い出してください。

職業安定法の基本条項

職業安定法には、職業紹介の定義と公共職業安定所、特定地方公共団体及び職業紹介事業者、労働者の募集を行う者及び募集受託者並びに労働者供給事業者が行う職業紹介の原則が規定されています。ここでは近年改正のあった労働条件の明示と労働者の指揮命令に関する条文を考えます。

法5条の3第1項または第2項とその解釈を紹介

法5条の3第1項または第2項に労働条件の明示が規定されています。「~労働者に対し、その者が従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を明示しなければならない。」とあります。しかしこれだけでは労働条件の明示が漏れてしまいます。結果職業安定法違反ということです。

雇用保険法等の一部を改正する法律(平成29年3月31日成立)の概要の中の「募集・求人時の労働条件等明示について」に具体的に明示事項は書かれています。

出展:雇用保険法等の一部を改正する法律の概要

法5条の3第3項とその解釈を紹介

さらに法5条の3第3項に「~明示された従事すべき業務の内容及び賃金、労働時間その他の労働条件を変更する場合、~、当該契約の相手方となろうとする者に対し、当該変更する従事すべき業務の内容等~を明示しなければならない。」とあります。

先の例と同様「労働条件の明示」に関するところですが、こちらは労働条件を変更した時も明示しなければならないとしています。詳しくは雇用保険法等の一部を改正する法律(平成29年3月31日成立)の概要の中の「労働契約締結前の労働条件等の明示」に書かれています。具体的には次の4つの場合に変更条件を明示しなければなりません。

出展:雇用保険法等の一部を改正する法律の概要

法4条7項とその解釈を紹介

法4条7項に「労働者供給とは、供給契約に基づいて労働者を他人の指揮命令を受けて労働に従事させることをいい、労働者派遣に該当するものを含みません。」と規定されています。ここに定義されているように職業安定法では労働者に職業紹介をするということで派遣をするものではありません。両者の違いのポイントは雇用関係です。

例えばA社が職業紹介をする会社で、B社に労働者Cを紹介した場合、B社が労働者を雇用することになります。しかしA社が派遣会社で、B社に労働者Cを派遣した場合、A社が労働者Cの雇用主のままであり、B社がCの雇用主になるわけではありません。ちなみに労働者派遣に関しては職業安定法ではなくて労働者派遣法で規定されています。

職業安定法に違反する例

職業安定法に違反する例をご紹介します。違反例に対して、どういった点に問題があったのか詳しくご紹介するので、ご参考ください。

違反例①労働条件の明示違反

法5条の3第1項または第2項に規定されているように、求人者は公共職業安定所等に対し、公共職業安定所等は求職者に対し、それぞれ労働条件を明示しなければなりません。その明示条件に不備があると問題です。

例えば職業紹介サービス会社のA社は求職者Bさんに株式会社山田工業の労働条件として、業務内容 契約期間 就業場所 就業時間・休憩時間・時間外労働、休日、賃金、加入保険について明示し、Bさんは納得してA社に紹介を依頼したとします。

この場合職業安定法の違反の可能性があります。平成30年1月1日(施行)に法改正され①試用期間の有無及び内容、②募集人・求人者の氏名または名称、③派遣労働者として雇用しようとする場合はその旨を明示しなければならないという3点が追加されています。A社は実は入社当初3か月の試用期間があったのですが、それが漏れていたのです。

違反例②労働契約締結前の労働条件等の明示違反

平成30年1月1日(施行)の改正でもう一つ労働条件等の明示違反の例を考えてみましょう。法5条の3第3項・省令・指針「求職者等が、労働契約の締結の前に、当該契約の中に、職業紹介・募集広告で示された労働条件と異なる内容等が含まれていないかどうか確認できるよう、求人者等に新たな明示義務を課すこととする。」 これは当初明示した労働条件の内容が変わったり、無くなったり、新たな条件が加わったり、範囲内であった条件が特定されたものになった場合、契約締結の前に新たな明示をすることが義務付けられたという意味です。

例えば当初は基本給が月給30万円となっていたものが27万円となっていたり、当初基本給が月給25万円、営業手当2万円となっていたのものが、基本給月給25万円となっていたり、またはその反対であったりした場合に、その変更等を追加で明示しない場合は職業安定法違反です。

違反例③指揮命令の権限に関連する違反

法44条に「何人も労働組合等が厚生労働大臣の強化を受けて無料の供給事業を行う場合を除くほか、労働者供給事業を行い、又はその労働者供給事業を行う者から供給される労働者を自らの指揮命令の下に労働させてはならない。」と規定されています。これに違反した例を考えてみます。

 例えばA社が工事の発注を元請工事会社B社にし、またB社は下請会社のC社に、C社は孫請会社のD社にしたとします。建設会社ではよくあることです。これ自体に問題はありません。では、D社で働いている従業員に直接B社の従業員が仕事の指揮命令を行った場合はどうでしょうか。これは法44条の違反です。従業員に指揮命令ができるのは、その従業員を雇用している会社に属している従業員のみです。指揮命令の権限がないB社の社員がD社の社員に工事のあれやこれやの指示をして作業させることはできないのです。

職業安定法に違反する場合の対処法

では以上の違反例はどうすれば起こらなかったのか事前に対処する方法を考えていきましょう。

対処法①

労働条件の明示に関して違反しないためには、法改正された内容も踏まえて明示内容に不備がないか、求職者に面談する前までにチェックしておくということにつきます。労働契約締結前に労働条件等が変更になった場合に関しても同様ですが、この場合できる限りわかりやすく労働者に明示することが必要です。

例えば当初の契約内容と変更後の契約内容を比較対象できるように、変更した部分の色を変えたり下線を引いたりしましょう。ただし、後で変更すればよいからと安易に労働条件を提示してはいけません。注意しましょう。

対処法②

工事の請負において元請、下請、孫請において労使関係があいまいで、指揮命令があいまいになる問題点を先に指摘しました。これは偽装請負ということで問題になることが多いのですが、大きく分けて4つのパターンがあります。

出展:東京労働局「偽装請負ってナニ?」

偽装請負の問題は形式的には請負だが、実態は労働者派遣であるところです。請負が形式的であるため労働者の雇用や安全衛生面などの労働条件が十分に確保されない可能性があります。であれば請負ではなく労働者派遣にすればよいかもしれませんが、工事などの建設業務は派遣が禁止されているためそうはいきません。建設業務に加え、港湾運送業務、警備業務、一定医療関係業務は派遣禁止業務です。

よって対処方法としては、発注する側と請け負う側が責任者レベルできちんと仕事内容を伝達することです。そして請け負う側の事業主等は自己の労働者に事前に研修を行うなどに留意し、自らが現場で指揮命令を正しく行うことです。

まとめ

職業安定法は、労働者を採用するときに注意すべきことを規定している重要な法律です。労働条件の明示は、正しく行わないと労働者が入社してから後々で様々な問題の火種となります。例えば試用期間と本採用期間との賃金が違うことをあらかじめ伝えておかなかったり、契約締結前にあらかじめ予定していた手当の減額が伝わっていないなどです。始めよければ終わりよしとは限らないかもしれませんが、やはり最初が肝心です。

労働者が会社に入社する前に労働条件に十分納得して、そして入社後は安心、安定して仕事に取組み生産性をあげてもらう。これが理想的な採用です。みなさんの会社はできていますでしょうか。不安であれば労働法の専門家である弁護士や社会保険労務士等に相談しましょう。

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