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労働基準監督署における災害時監督

KiteLab 編集部
2022.02.07

前回の記事では定期監督について解説をしました。今回は引き続き監督署が実施する臨検について解説を行います。今回のテーマは「災害時監督」について解説をします。また「申告監督」の記事についても、ぜひご覧ください。

災害時監督

災害時監督は労働者死傷病報告等から、労働者が業務中に負傷等をし、その負傷の原因が労働安全衛生法違反に起因する疑いがあると判断された場合に行われるものです。

災害時監督の起因となる代表的な法令違反として、安衛則第101条、安衛則第107条、安衛則第519条等が挙げられます。

①安衛則第101条 

工場等に設置されている機械の回転軸や歯車等に労働者の身体の一部が触れると、巻き込まれによる事故が起きる可能性があるため、これらの箇所には覆いや囲いを設置しなければなりません。

労働者が機械の付近で転倒し、むき出しになった回転軸に巻き込まれたり、挟まれたりする事故が典型的な例です。覆い等を設けなかったことにより、巻き込まれ等の事故が発生した場合は安衛法第20条(安衛則第101条)違反となる可能性があります。

また一般的な機械のうち食品加工工場等において、食品加工用機械による死傷災害が増加していることをきっかけに、平成25年に安衛則に食品加工機械についての規則が追加されています。

参考
第101条 事業者は、機械の原動機、回転軸、歯車、プーリー、ベルト等の労働者に危険を及ぼすおそれのある部分には、覆い、囲い、スリーブ、踏切橋等を設けなければならない。

参考:食品加工用機械を使用して作業を行う事業者の皆さまへ

②安衛則第107条

 機械等の掃除・調整作業を行う際には機械の運転を停止してその作業をさせなければなりません。例えば機械の回転軸等にゴミが付着している際に機械を止めずに、ゴミを取り除いた際に回転軸に巻き込まれるといったものが典型的な死傷災害の例です。

事業場で掃除等をする際は機械を止めてから行うように指導をしていたとしても、労働者が反動的に回転軸等に手を触れたり、「これくらいなら大丈夫だろう」と思いそのような行動にでたりする場合もあります。

なお、刃部の掃除等の場合の運転停止等は安衛則第108条に規定がおかれています。

参考
(掃除等の場合の運転停止等)
第107条 事業者は、機械(刃部を除く。)の掃除、給油、検査、修理又は調整の作業を行う場合において、労働者に危険を及ぼすおそれのあるときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の運転中に作業を行わなければならない場合において、危険な箇所に覆いを設ける等の措置を講じたときは、この限りでない。
2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠を掛け、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。

(刃部のそうじ等の場合の運転停止等)
第108条 事業者は、機械の刃部のそうじ、検査、修理、取替え又は調整の作業を行なうときは、機械の運転を停止しなければならない。ただし、機械の構造上労働者に危険を及ぼすおそれのないときは、この限りでない。

2 事業者は、前項の規定により機械の運転を停止したときは、当該機械の起動装置に錠をかけ、当該機械の起動装置に表示板を取り付ける等同項の作業に従事する労働者以外の者が当該機械を運転することを防止するための措置を講じなければならない。

3 事業者は、運転中の機械の刃部において切粉払いをし、又は切削剤を使用するときは、労働者にブラシその他の適当な用具を使用させなければならない。

4 労働者は、前項の用具の使用を命じられたときは、これを使用しなければならない。

③安衛則第519条

 高さ2メートルを超える箇所には囲いや覆い等の墜落防止措置を設けなければなりません。墜落防止措置を設けず労働者が作業箇所から墜落し負傷等をした場合には安衛法第20条(安衛則第526条)に違反する可能性があります。典型的な事故の経緯としては、倉庫の2階の箇所へ、機械等を用いて荷物の搬入するため手すり等を一時的に取り外し、取り外したままの状態となっていたこと等が挙げられます。

参考
安衛則第519条
事業者は、高さが二メートル以上の作業床の端、開口部等で墜落により労働者に危険を及ぼすおそれのある箇所には、囲い、手すり、覆おおい等(以下この条において「囲い等」という。)を設けなければならない。

以上のように死傷災害の典型例を解説いたしました。令和2年度における休業4日以上の死傷災害は13万人を超えており、労働災害防止のため引き続き対策が必要です。
また、災害時監督であっても、災害のみの調査にとどまらず、労務管理も併せて調査を行う場合があります。
参考:労働災害発生状況|厚生労働省

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