KiteRa magazine

社内規程の専門メディア
  1. トップ
  2. KiteRa magazine
  3. 労働基準法
  4. 労働協約と労使協定の違いとは?概要や注意事項を解説
2021/08/24
労働基準法

労働協約と労使協定の違いとは?概要や注意事項を解説

たくさんの人が集まり仕事を行う会社において、守るべきルールは多岐にわたります。ルールを正しく運用していくためには、会社と労働者間の合意形成が重要です。このルールを定める文書として、法律では、よく耳にする就業規則以外にも、労働協約/労使協定が定められています。

  • 労働協約:使用者と労働組合において締結する書面による協定
  • 労使協定:事業場に、労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定

労使協定という言葉はよく聞かれますが、労働協約とは一体どのようなものでしょうか。今回は労働協約をテーマに取り上げ、基本事項や労使協定との違いを踏まえつつ、作成手順や注意点について解説します。

1.労働協約の概要

企業において労働者が働くうえでのルールを定めたものを就業規則といいますが、それに対し労働協約とは、使用者と労働組合による取り決めや契約のことを指します。労働組合は労働協約を締結することによって就業規則とは異なる労働条件を定めることが可能となります。

労働協約の位置付けと目的

労働条件を定めるものとして労働基準法、労働協約、就業規則などがありますが、それらの優先順位は労働基準法>労働協約>就業規則となります。これについてX社、X社内のY労働組合における労働時間を例に解説します。

労働基準法第32条第2項において1日の労働時間の上限は8時間と定められていますが、X社の就業規則に定められた労働時間は7.5時間だったとします。それに対し使用者とY労働組合が労働協約において労働時間を7時間と定めた場合、Y労働組合に加入する労働者の労働時間は就業規則より優先され7時間となります。

なお、労働基準法はもっとも優先されるため、労働協約や就業規則において1日8時間を超える労働時間を定めることは原則としてできません。

<労働契約法第十三条>
第十三条 就業規則が法令又は労働協約に反する場合には、当該反する部分については、第七条、第十条及び前条の規定は、当該法令又は労働協約の適用を受ける労働者との間の労働契約については、適用しない。

2.労使協定の概要

労使協定とは、使用者と労働者の過半数を代表する者等によって締結される協定のことを指します。

労使協定の種類は労働基準法やその他法令に定められています。代表的なものとして「時間外労働・休日労働に関する協定」(通称36協定)が挙げられます。

労使協定の位置付けと目的

労使協定における労働者の過半数を代表する者等とはどういうものでしょうか。

  • 労働者の過半数で組織する労働組合がある場合はその労働組合
  • 上記の労働組合がない場合は労働者の過半数を代表する者

このように過半数組合あるいは労働者の過半数を代表する者を締結主体とすることにより、使用者との力関係を公平に保つ意味合いがあります。

労働協約や就業規則との関係性はどういうものでしょうか。労働協約や就業規則は労働基準法で定められた範囲を逸脱することができませんが(労働基準法第十三条)、労使協定を締結することにより一定の範囲で特例を定めることが認められています。

たとえば賃金控除協定です。労働基準法において賃金は全額を支払う必要があると定められていますが、この協定を締結することによって親睦費などを賃金から控除することが可能となります。

<労働基準法第二四条>
第二十四条 賃金は、通貨で、直接労働者に、その全額を支払わなければならない。ただし、法令若しくは労働協約に別段の定めがある場合又は厚生労働省令で定める賃金について確実な支払の方法で厚生労働省令で定めるものによる場合においては、通貨以外のもので支払い、また、法令に別段の定めがある場合又は当該事業場の労働者の過半数で組織する労働組合があるときはその労働組合、労働者の過半数で組織する労働組合がないときは労働者の過半数を代表する者との書面による協定がある場合においては、賃金の一部を控除して支払うことができる。
② 賃金は、毎月一回以上、一定の期日を定めて支払わなければならない。ただし、臨時に支払われる賃金、賞与その他これに準ずるもので厚生労働省令で定める賃金(第八十九条において「臨時の賃金等」という。)については、この限りでない。

3.労働協約と労使協定の違い

使用者と労働者間の取り決めである労働協約と労使協定ですが、具体的にどのような違いがあるのでしょうか。

  • 締結形式と内容
  • 有効範囲
  • 有効期間

上記についてそれぞれの違いを解説いたします。

労働協約と労使協定の締結形式と内容

労働協約は、労働組合による団体交渉を経て両者の合意のもと労働条件や待遇が取り決められます。締結のためには書面に記し、双方の署名または記名押印が必要となります。この際、書類の名称が「覚書」や「合意書」であっても労働協約と認められます。

それに対し労使協定は、種類が労働基準法等で定められており、協定の内容によっては労働基準監督署長への届け出が必要となります。締結のためには書面に記し慣例として労使双方の署名または記名押印が必要な場合があります。その後届け出が必要と定められているものは(36協定など)労働基準監督署長へ届け出をして事業場に備えておき、届け出の必要がないものも同様に事業場に備えておくことが必要です。

労働協約と労使協定の有効範囲

労働協約は使用者と労働組合により締結されるものであるため、有効範囲が及ぶのはその当事者となった労働組合の組合員のみとなります。

それに対し労使協定は使用者と事業場の労働者の過半数を代表する者等との間で、内容及び適用範囲を取り決めます。締結された事項はその事業場において適用範囲とされた労働者に適用されます。

ただし、労働協約の適用を受ける労働者数が事業場の4分の3以上となる場合は、その事業場において労働組合に加入していない同種の労働者についても労働協約の内容が適用されます。

<労働組合法第十七条>
第十七条 一の工場事業場に常時使用される同種の労働者の四分の三以上の数の労働者が一の労働協約の適用を受けるに至つたときは、当該工場事業場に使用される他の同種の労働者に関しても、当該労働協約が適用されるものとする。

このように、労働協約と労使協定の適用範囲は異なるため、事業場の労働者数と組合員数を把握しておくことが重要となります。

労働協約と労使協定の有効期間

労働協約の有効期間は上限3年とされており、3年を超える期間の定めがあったものは3年の期間を定めたものとみなされます。期間を定めずに締結したものは、労使どちらか一方から少なくとも90日間の予告期間を設けて解約することが可能です(労働組合法第十五条)。

<労働組合法第十五条>
第十五条 労働協約には、三年をこえる有効期間の定をすることができない。
2 三年をこえる有効期間の定をした労働協約は、三年の有効期間の定をした労働協約とみなす。
3 有効期間の定がない労働協約は、当事者の一方が、署名し、又は記名押印した文書によつて相手方に予告して、解約することができる。一定の期間を定める労働協約であつて、その期間の経過後も期限を定めず効力を存続する旨の定があるものについて、その期間の経過後も、同様とする。
4 前項の予告は、解約しようとする日の少くとも九十日前にしなければならない。

それに対し労使協定の有効期間は法律上の制限は原則的にありません。労使協定には労働基準監督署長に届け出が必要なものと、届け出の必要がなく合意した開始日から有効になるものがあるため注意が必要です。また、確かに有効期間の制限はありませんが、昨今の働き方改革の流れや労働関連法の改正があることを考慮すると、同じ協定内容を引き継ぐのではなく1年ごとに内容を見直し更新をしていくのが望ましいとされています。

4.労働協約の作成手順

ここまで労働協約と労使協定の違いを見てきましたが、具体的に労働協約の作成手順はどのようなものになりますでしょうか。作成、届出、改訂について解説いたします。

労働協約の作成の流れ

労働組合法第十四条において、労働協約を有効に成立させるには、使用者と労働組合による団体交渉で合意に達した内容を書面に記し、双方の署名または記名押印が必要となります。使用する名称は「労働協約」「覚書」「合意書」などどのようなものでもよく、双方の合意により締結されたものであれば労働協約として成立します。体裁に関しては、必ずしも一つの労働協約にする必要はありません。労使が必要と判断し合意した事項から個別労働協約として締結していくことが可能です。

<労働組合法第十四条>
(労働協約の効力の発生)
第十四条 労働組合と使用者又はその団体との間の労働条件その他に関する労働協約は、書面に作成し、両当事者が署名し、又は記名押印することによつてその効力を生ずる。

労働協約の届け出に関して

先にも述べましたように、労使協定には労働基準監督署長へ届け出が必要なものとそうでないものがあります。それに対し労働協約は労働基準監督署長への届け出は必要ありません。

労働協約の改訂に関して

労働協約の内容を労使双方にとってより良い条件へ変更していくことが望ましいですが、労働者に不利な労働条件へと変更になる場合でも必ずしも無効とはなりません。特定の労働者に対する不利益を目的とするものでなく、会社の経営状況などから合理的に判断されたものであれば有効となり得ます。

5.労働協約の注意点

労働協約の作成と運用をするにあたり、どのようなことに注意が必要でしょうか。労働協約は労働組合法に定められたものであるため、それに則って対応することが重要です。違反した場合の罰則や効力を発揮させるための要件について解説いたします。

労働基準法に違反した場合

労働協約は就業規則よりも優先されるなど非常に強い効力を持っていますが、当然ながら労働基準法に違反する内容は締結できません。労使で内容を合意した労働協約があるにもかかわらず、使用者が労働協約に違反した場合でも直ちに罰則が適用されるわけではありませんが、訴訟や労働紛争に発展する可能性もあるため注意が必要です。

効力を発揮するための要件

労働協約が効力を発揮するためには次の2つの要件を満たす必要があると労働組合法第14条に定められています。

  • 合意内容を書面に記すこと
  • 使用者と労働組合双方の署名または記名押印

労働協約は労働条件に関する重要な取り決めであることや就業規則よりも優先されるほど効力が強いものであるため、口頭での約束や署名および記名押印なしでは成立しませんので注意が必要です。

6.労働組合がある場合の就業規則の変更方法

労働組合がある事業場ではどのような方法で就業規則を改定するのでしょうか。労働組合がある事業場は2つの形態に分けられます。

  1. 労働者の過半数で組織する労働組合がある
  2. 労働者の過半数で組織する労働組合がない

上記に応じて就業規則を変更する際に意見を聴く先が以下のとおり異なります。

①労働者の過半数で組織する労働組合がある場合
使用者は労働組合に意見を聴く必要があります。

②労働者の過半数で組織する労働組合がない場合
使用者は労働者の過半数を代表する者に意見を聴く必要があります。

このように、事業場における労働組合の構成人数を把握し状況にあわせた対応が必要です。

7.まとめ

労働協約は会社或いは事業場と労働組合における労働条件などを定めた重要なルールです。その成立要件や適用範囲は法律で定められているため、作成・運用ともに慎重な対応が求められます。また、昨今の急激な変化を伴う社会情勢にあっては、簡単に解約できない労働協約を安易に締結してしまうことはリスクともいえます。

従って、労使一体となってあるゆる角度から検討を加え、よりよい会社づくりや労働環境を整備すべく労働協約を締結することが重要です。この機会に労働協約のあり方について見直しの場を設けていただくことをおすすめします。

資料請求
お問い合わせ