2023/05/31

  • 働き方改革

物流業界の2024年問題について

物流業界の2024年問題について

「2024年問題」とは、時間外労働の上限規制など、『働き方改革関連法』の施行に伴い、2024年(令和6年)4月1日から物流業界で生じる様々な問題を表す言葉です。

働き方改革関連法が制定された経緯

働き方改革関連法は、働く人々が個々の事情に応じた柔軟な働き方の実現を目的に、労働関係の法令に追加された通称です。「働き方改革関連法」という法律があるのではなく、労働基準法や労働契約法等の改正をまとめて表現したものです。

少子高齢化に伴う労働力不足や長時間労働に対応できる労働者の減少、育児や介護、治療との両立が必要な労働者への対応の必要性を背景に、2018年(平成30年)6月に成立し、2019年4月から段階的に順次施行されています。

参照:トラック運送業界の2024年問題について(公益社団法人全日本トラック協会)

物流業界に関わる法改正の内容

既に施行されている内容を含めて、次のような改正があります。詳しく見ていきましょう。

参照:労働関係法令が改正されました(厚生労働省・国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会)

1.時間外労働の上限規制

これまで時間外労働の上限適用が猶予されていた物流業界(自動車運転業務)に対して、2024年(令和6年)4月1日より上限が適用されます。一般則(原則)と物流業界(自動車運転業務)の時間外労働の上限は、それぞれ次の通りです。

  一般則(原則) 自動車運転業務
年間 720時間以内
(法定休日労働は含まず)
960時間以内
(法定休日労働は含まず)
単月 100時間未満
(法定休日労働を含む)
規制なし
2~6月平均 80時間以内
(法定休日労働を含む)
規制なし

2.月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ

2023 年(令和5年)4 月から、中小企業においても月 60 時間超の時間外労働への割増賃金率が 50%となりました。(月 60 時間までの時間外労働への割増賃金率は 25%でも構いません。)

3.年5日の年次有給休暇の取得義務付け

2019 年(平成31年) 4 月から、年次有給休暇の付与日数が 10 日以上の労働者を対象に、付与された日数のうち 5 日分については必ず取得するよう制度化されました。

労働者が自ら取得したり、会社から労働者へ計画的に付与したりといった年次有給休暇の日数は、 義務付けられている 5 日から控除できます。

なお、使用者による年次有給休暇の時季指定を実施する場合、休暇に関する事項は、就業規則の絶対的必要記載事項ですので、時季指定の対象となる労働者の範囲及び時季指定の方法等について、就業規則に記載しなければなりません。

4.労働時間の適正把握の義務付け

健康管理の観点から、管理監督者等も含め、すべての労働者の労働時間の状況についてタイムカード など客観的な方法その他適切な方法で把握しなければなりません。 加えて、時間外労働が一定時間を超えた長時間労働者(※)から申出があった場合、医師による面接指導を実施します。

※面接指導を必要とされる対象労働者は、1 週間当たり 40 時間(法定労働時間)を基準として、 時間外・休日労働時間が 1 月当たり 80 時間を超え、かつ疲労の蓄積が認められる労働者です。

5.産業医・産業保健機能の強化

次の取り組みが必要です。

  1. 長時間労働者の状況や労働者の業務の状況など、産業医が労働者の健康管理等を適切に行うために必要な情報を提供しなければなりません。
  2. 産業医から受けた勧告の内容について、事業場の労使や産業医で構成する衛生委員会に報告する必要があります。
  3. 産業医等が労働者からの健康相談に応じるための体制整備に努めなければなりません。
  4. 労働者の健康情報の収集、保管、使用及び適正な管理について、指針を定め、労働者が 安心して事業場における健康相談や健康診断を受けられるようにします。

産業医について

職場における労働者の健康管理等を効果的に行うため、医学に関する専門的な知識が不可欠なことから、常時 50 人以上の労働者を使用する事業場において、事業者は、産業医を選任しなければなりません。

6.勤務間インターバル制度

事業主は、2019 年(平成31年)4 月より、前日の終業時刻から翌日の始業時刻の間に労働者に対する一定時間以上の休息時間(インターバル)を確保するよう努めなければならないこととされました。

7.同一労働・同一賃金

同じ職場で働く正規社員と非正規社員(短時間労働者、有期雇用労働者、派遣労働者)との間で基本給、賞与、手当などのあらゆる待遇について、不合理な差を設けることが2020年(令和2年)4月1日より、パートタイム労働法・労働契約法・労働者派遣法の施行により禁止されました。(中小企業へのパートタイム労働法・労働契約法の施行のみ2021年(令和3年)4月1日施行)

法の施行に伴い、 短時間労働者などから正規社員との待遇の違いやその理由などについて、説明を求められた場合は、説明しなければなりません。

労働者の雇用形態、待遇の状況(正規社員と短時間労働者等との取扱いの違いがあるかどうか)を確認し、待遇に違いがある場合は、違いを設けている理由を確認のうえ、その違いが不合理ではないと説明できるよう整理する必要があります。

具体的にはどのような問題が生じるのか

上記のように、物流業界への影響は大変厳しくなっています。「時間外労働の上限規制」により労働時間の制約が、「月60時間超の時間外労働に対する割増賃金の引き上げ」、「年5日の年次有給休暇の取得義務付け」では賃金の増加が生じる可能性があります。

特に時間外労働の上限規制による影響は大きく、次のようなことが生じます。

  1. 運送会社や物流業界企業の売上や利益が減少する。
  2. 物流業界の運転者の収入(給与など)が減少する。
  3. 運送会社へ依頼する際の費用が上昇する。

どのような対応が必要か

労働生産性を上げて労働時間を削減する仕組みを作ることで、「労働時間の上限規制」や「月60時間超の時間外労働の割増賃金率の引き上げ」の課題を回避できる可能性があります。

参照:労働関係法令が改正されました(厚生労働省・国土交通省・公益社団法人全日本トラック協会)

まとめ

この記事では、物流業界が抱える課題についてご案内しました。KiteRaでは、KiteRa標準雛形【条文集】にて「業種別条文集~トラック運送業~」を公開しています。

トラック運送業の就業規則作成の際に、よろしければ、ご利用ください。

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