TOP労務コラム職場におけるLGBTQ対応③ 具体的なハラスメント対応

職場におけるLGBTQ対応③ 具体的なハラスメント対応

KiteLab 編集部
2022.05.30

1回目はこちら→職場におけるLGBTQ対応① LGBTQとは
2回目はこちら→職場におけるLGBTQ対応② LGBTQに関するハラスメントの事例
3回目の今回は、職場におけるLGBTQに関する具体的なハラスメント対応について紹介します。

職場における具体的なハラスメント対応

パワハラ防止法指針に沿った対応

2022年4月から中小事業主を含めたパワハラ防止措置が義務化されています。措置義務である次の4項目の対応ポイントを確認していきましょう。

①事業主の方針の明確化及びその周知・啓発

経営層や管理職がLGBTQに関してその多様性を認め、支援的な姿勢を示すことは社内の取り組みを進めるにあたってとても重要です。社内の状況に応じ、社内規程や行動指針に方針を明記することや、経営層からの支援宣言として別途明示し、周知する方法があります。

②相談(苦情を含む)に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備

指針においては、パワハラ、セクハラ、マタハラなど様々なハラスメントについて、一元的に相談可能な体制を作ることが望ましいとされています。
ハラスメントの相談窓口を設ける際、LGBTQやSOGIに関する内容も含め相談可能であることを周知するのは効果的です。被害を受けた相談者が相談を躊躇してしまうことの無いよう、相談窓口担当者がLGBTQやSOGIに関する研修を受講済みであることを明示するとよいでしょう。

③職場におけるパワーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応

相談窓口担当者や調査担当者は、事実関係について迅速かつ正確に確認することが必要です。
ただし、相談を聞く過程・相談内容について調査をする過程において、当該調査に必要ない範囲(性的志向や性自認に関する内容)までヒアリングしたことにより、結果としてアウティングを強要してしまったということも起こり得ます。
二次被害を防ぐためにも、相談段階で伝えにくいことは答えなくてもいいことをしっかりと本人に伝えるほか、調査においては当該事象にフォーカスしてヒアリングするようにしましょう。

④併せて講ずべき措置(プライバシー保護措置等)

LGBTQやSOGIに関するハラスメント相談対応において、アウティングなどの二次被害を生まないことが重要です。相談段階において、個人情報の共有範囲はどこまでか(どの部署の誰に何を伝えるのか等)を明確にし、本人の同意を得るようにしましょう。
なお、対応にあたっては、プライバシー保護のため必要な措置を講じていることをあらかじめ社内周知するなど、安心して相談できる体制づくりが必要です。

その他具体的な取り組み事例

アライ(Ally)

同盟、提携という意味(alliance)を語源とし、非当事者として、LGBTQの当事者が抱える社会的課題を主体的に、積極的に解決していくことをめざす支援者をいいます。LGBTQフレンドリーの環境づくりのため、企業のロゴを入れたAllyステッカーやピンバッチ等のグッズを作成・配布したり、社内でAllyコミュニティを立ち上げイベントを企画したりといった取り組み事例も。

福利厚生制度

慶弔休暇や慶弔見舞金、出産・育児・介護休暇・休業などの福利厚生制度について、事実婚の同性パートナーにも適用する企業も増えてきています。社内制度として、事実婚の同性パートナーを配偶者に含める場合、該当規程において配偶者の定義を規定しておきましょう。

<規定例>
第〇条 (配偶者の定義)
 本規程における配偶者とは、戸籍上の配偶者に限らず、事実婚および同性婚における配偶者に相当する者を含むものとする。

制服等の服装規定

男女別のユニホームを選択制(スカート・パンツ、色やデザイン等)にしたり、男女で差がないようなデザインに変更する例や企業によっては服装規定自体を廃止してしまう例もあります。

公正な採用を行うために

応募者の中にLGBTQ当事者の方も当然に存在します。LGBTQ当事者は、採用選考時において(カミングアウトの有無にかかわらず)SOGIに関わる困りごとを抱えやすい状況にあるといえます。LGBTQであることと職業上の能力には関係がありません。採用する側からカミングアウトを強要したり、SOGIについて業務に必要な事項以上に興味本位で質問したりすることの無いよう、能力や適性に基づいた公正な採用選考を心がけましょう。
参考:(令和3年度版)公正な採用選考をめざして(厚生労働省)

<履歴書の性別欄について>
応募書類である履歴書の性別欄について、トランスジェンダー当事者等からの性別欄削除の要望を受け、2020年に日本規格協会が履歴書の様式例自体を削除しています。それを受けて、厚生労働省は2021 年 4 月に独自の厚生労働省履歴書様式を作成、性別欄を任意記載欄としました。
参考:厚生労働省職業安定局雇用開発企画課就労支援室 「新たな履歴書の様式例の作成について」

まとめ

3回にわたり、「LGBTQとは」「LGBTQに関するハラスメント事例」「職場における具体的なハラスメント対応」について紹介させていただきました。まずはLGBTQについて正しく理解した上で、それぞれの職場の状況に応じてできることからはじめてみる、それが安心して働ける職場をつくるための第一歩ではないでしょうか。

この記事を書いた人

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株式会社KiteRaの中の人

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